クリエイティブの授業
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クリエイティブの授業/オースティン・クレオン著

『クリエイティブの授業』

  • オースティン・クレオン 著 austinkleon.com
  • 千葉敏生 訳
  • 実務教育出版
  • 2012年9月30日 初版第1刷発行
  • 2012年11月10日 初版第2刷発行

著者のプロフィールには作家、アーティスト、講演家とあります。

この本は、そんなクリエイティブな著者の、クリエイティブであろうとする人に向けての様々なメッセージが詰まった本です。

盗む

たぶん、何らかの創作をする人なら、「まったくこの世に存在しないオリジナルを作ってやろう」という意気込みとか、あるいは「オリジナルでなければいけない」という強迫観念のようなものがある(あった)と思うんですよね。若気の至り的な。

でもこの本の、原題にもなっている第1章「アーティストのように盗め!」では、

小説家のジョナサン・レセムがこんなことを言っている。「何かを“オリジナル”と呼ぶやつは、十中八九、元ネタを知らないだけなんだ」

といった著名人の言葉を引用しつつ、

「オリジナルでなければ」という肩の荷を下ろせば、僕たちはもう無から何かを作ろうなんて思わなくなる。他人の影響を避けようとするんじゃなくて、受け入れられるようになるんだ。

と、「オリジナルでなければ」という強迫観念からの脱却を促します。

そして、

誰もスタイルや個性を持ったまま生まれてくるわけじゃない。(中略)“コピー”して学んでいくわけだ。

と、コピーから始めることを勧めます。日本でよく言われる、「学ぶことはまねぶこと」というものです。

というわけで、まずはコピーする相手(この本では「ヒーロー」と呼ぶ)を見つけることが、創作の始まりです。

ただし、コピーを勧めるといっても、盗作については、

といっても、僕の言うコピーというのは、練習であって盗作じゃない。盗作ってのは、他人の作品を自分の作品にしてしまうことだ。コピーとは、いわばリバースエンジニアリングだ。整備士が車を分解して仕組みを調べるのと似ている。

と、ちゃんと線引きしています。技術は盗み盗まれるものだけど、作品のアイデンティティは盗んじゃいけない、ってことです。

そして、コピーする、ということをもう一段深め、

単にスタイルを盗んじゃいけない。スタイルの奥にある“考え方”を盗もう。君にとって大事なのは、ヒーローのように見えることじゃなくて、ヒーローのように見ることだ。

と説きます。「作品の本質を理解せずに、上っ面だけをまねていたら、君の作品はせいぜい贋作にしかならない」とも。

その先に、自分自身の創作があります。

だから、ヒーローをコピーしよう。そして、自分に足りない部分を見つけよう。自分にしかない個性とは?その個性を何倍にも膨らませて、自分だけの作品へと変えよう。

前書きに「昔の僕へ」とあるように、きっと著者の方も若い頃は、オリジナルでなければいけない、とか、盗むことへの後ろめたさとかあったんでしょうね。

そこから達した、現在地から見た創作の風景が、行間からあふれる情熱に引っ張られるように読めて、とても読みやすいです。

何を作るか

著者の方は、10歳の時に「ジュラシック・パーク」を観て、その続きを自分で考えたそうです。

数年後、待ちに待った『ジュラシック・パーク2』が公開された。最悪だった。続編ってのは、たいていみんなの期待を裏切る。

どうやら、続編はお気に召さなかったようですね。でもそういうのを、「創作のエネルギーに変えればいい」、と説きます。

君の大好きな作品や、それを作ったヒーローを思い浮かべてほしい。一味足りない部分は?まだ作られていないものは?どうすればもっとよくなる?その人が今でも生きているとしたら、どんな作品を作るだろう?君の好きなクリエイターたちを集めて、コラボさせたら、どんな作品が生まれるだろう?

君が作らなきゃいけないのは、その作品だ

いやぁ、熱いですね。でも、こういうのありますね。

昔に観た映画とか、記憶の中で何度も反芻して、すごく面白かった気がして、でも何年も経って(大人になって)見てみると、「あれ?こんなもんだっけ?」と拍子抜けすることがあります。

もちろん、今見ても面白い、と感じる作品もありますが、それでも、時間が経って見直すと意外と細かいアラが見えたりします。

音楽も、「なんかこんな感じの聴いた気がするんだけどなぁ…」という漠然としたイメージだけが残っていて、たぶんこれじゃないかな?という曲を見つけても、思ってたのと全然違う感じで、「自分はこういうのを聴きたかった」という思いが、新たな創作のモチーフになったりします。

ゲームでも、あの時感じたあのインプレッション、今やってみると意外と大したことなく見えるけど、じゃあそのインプレッション、今なら形にできるかも、とか。

創作の動機って、そういうものです。

自分を切り捨てない

情熱を傾けられることが2つや3つあるのなら、それを1つに絞ることはない。捨てちゃだめだ。楽しみはすべて人生に残しておこう。

と説きます。自分の中に情熱があるのなら、それを切り落としても、またうずいてくる、と。

自分を切り捨てちゃいけない。作品の全体像だとか、共通ビジョンだとか、そんなものは忘れよう。一貫性なんて気にしなくていい ― 「君が作った」という事実が作品を結ぶのだから。ある日、振り返ったら、すべてがつながって見えるはずだ。

「一貫性なんて気にしなくていい」、この言葉で楽になる人は、少なくないと思います。

たぶん、クリエイティブな人なら、多かれ少なかれ「自分に個性なんてないんじゃないか」と不安になったことがあると思います。きっとこの著者の方も、若い頃そう感じたのでしょう。

あるいは「作品には一貫した個性が必要なんじゃないか」と、無理やり自己主張しようとしたこともあるでしょう。

でも、そんなに無理しなくても、自分が普通だと思ってやってることに、にじみ出てしまう ― 個性ってそんなものかな、と思います。

まとめ

そんな感じのことが書かれたこの本、創作で何か行き詰った時などに、繰り返し読み返したい本です。

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